Mari Matsuno の日記

神戸とパリ在住の画家、松野真理のブログです。

米原万里さんの「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」を読んだ。
5月25日になくなって31日のブログに書いたら渡里さんが「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」を読んだと書き込んでくれた。ずっと読みたいと思っていたのだけどやっと本が手に入った。
9歳から14歳の5年間プラハソビエト学校で学んだときの友人を探して会う話だけど「プラハの春」とか同じ年だからリアルタイムで時を過ごしている。ソ連プラハ侵攻、日本も強い軍隊持ってないと簡単に攻め込まれるんじゃないかと思ったりしたけれど渦中にいる人からの話は、そんなのんびりしたものではない。
仲のよかった兄弟にそれぞれ入れ知恵するものがいて戦争になったって話、本当だと思う。アフリカでも起こってる。民族間の争い。同一国の中で。

そんな緊張感の中で生きてはいないけれどフミが10歳から12歳までパリで現地の小学校で暮らしたときのことを少し思い出す。外国人にその国の話をさせるくだりがあるがフミも日本のことを語る時間を与えられて変なことに子供たちは柔道の格好をしたり扇子を持ったりして「日本の日」を演出してた。
日本のお菓子を持ってきてくれた先生もいたと言っていた。クラス27人中父母ともフランス人は13人で後は色々だった。アジア系は中華街に近いけどそのクラスにはフミ一人だった。フミが帰る前10人もの子供たちが来てくれて名残を惜しんだけどもう誰とも続いていない。筆不精な男の子にとって12歳はちょっと幼すぎた。日本にいると日本のいやなとこばかり目立つけど外国にいるとすごく日本人になってる。そしてこの年になると日本の自然の美しさを感じる。

もちろん安っぽい大きな看板や田んぼの中に立つ高速道路、人為的で美しくないこともいっぱいあるけど。

心打たれるのは波乱の現実が同じ時を生きてる間の歴史であるから、そして誠実な生き方をした彼女の視点で語られているから。賢くて魅力的な米原万里さんがなくなってしまった。